栄養部
腎臓病食を知ろう
腎臓病は症状によって違いますが、進行する腎臓病(慢性腎不全)では薬物療法が重要です。正しい食事療法を行い、腎機能の進行を抑え、透析をしない一生が送れるようにがんばりましょう。 |
- たんぱく質の制限
通常は標準体重1kgあたり0.6~0.8gに制限します。
尿たんぱく排泄量とクレアチニン値によって決まります。 -
十分なエネルギー摂取
標準体重1kgあたり35kcal必要です。
年齢や運動量によって28~40kcalになります。 -
塩分の制限
1日6~7gを目標に減塩します。
高血圧や浮腫がある場合は5g以下に制限される事もあります。 -
場合によっては水分、カリウム、リンを制限することもあります。
たんぱく制限について
私達が生きるためにはエネルギーが必要です。そのエネルギーは食物のたんぱく質・炭水化物・脂質の3つの栄養素を燃やして得ています。身体の中でこれらの栄養素を燃やすと、いずれからも二酸化炭素と水が発生しますが、たんぱく質だけはさらに尿素窒素などの毒素を発生します。
腎臓はこの毒素を尿と一緒に排泄するはたらきをしています。そこで毒素の大もととなるたんぱく質を減らすと、腎臓の仕事量が軽くなり、腎機能の低下を遅らせることができるのです。
たんぱく質は卵、肉、魚、乳製品、豆類だけでなく、穀類や野菜、果物など砂糖類や油脂類以外はほとんどの食品に含まれています。同じたんぱく質でも質の良し悪しがあって、動物性たんぱく質は植物性に比べ、体たんぱく(筋肉や血液)をつくりやすいので「良質なたんぱく質」といわれています。
筋肉の減少や貧血を予防するためには制限されたなかで、可能な限り質の良い動物性たんぱく質をとることが重要です。つまり医師から指示されたたんぱく量のうち、50~60%を動物性たんぱく質から摂る事が望ましいのです。
食べてはいけない食品はありません。家族と同じ食生活の中でちょっとした工夫をしてみましょう。
- 治療用食品を上手に利用しましょう。
良質のたんぱく質を多くとるためには主食からとるたんぱく質を減らすことです。しかし、主食の量を減らすと、エネルギーが不足してしまいます。そこで治療用特殊食品(低たんぱくご飯や麺類、パンなど)を利用するとエネルギー摂取を減らさないで、たんぱく質だけを減らすことができます。 - 少ないたんぱく質を多く見せる工夫をしましょう。
・肉、卵、豆腐は野菜と一緒に料理すると量が多くなります。
(例:肉の野菜巻き・野菜を多くした串焼き・卵とじ・豆腐の野菜あんかけ)
・魚は尾頭付きにすると大きく見えるだけでなく、豪華になります。
(例:えびの姿焼き)
・混ぜご飯、カレーライス、ピラフなどは魚や肉を少なくしてもあまり見劣りしません。 - 3食のうち1食はおかずがなくても食べられるような献立を組み入れましょう。
(例:パンとジュース・野菜炒飯とスープ・天ぷら(野菜)うどん) - 材料は薄切りやみじん切りにするとかさが増え、ボリュームがアップします。
- 家族と同じ献立でプラス、マイナスを上手にすれば、家族と一緒に食べられ、長続きします。
(例:カレーやシチューは肉を除く。お寿司の盛り合わせは魚類を減らし、かっぱ巻やかんぴょう巻を多くする。天ぷらは魚類を減らし、野菜を多めにする。)
たんぱく質を制限すると必然的にエネルギーも得にくくなり、エネルギー不足になってしまいます。
例えばたんぱく質を30gに制限すると1300kcal程度しか摂取できません。不足分はたんぱく質をほとんど含まない糖質(砂糖やでんぷん)と油脂類を上手に使って補給する事になります。
摂取エネルギーが必要量を下回る状態が続くと、今まで貯蔵されていた脂肪や体たんぱく(筋肉・血液)がエネルギーとして燃えてしまいます。その結果、筋肉が減少、体重もだんだん減ってきて、疲労や脱力感が現れ、無気力になってしまいます。
また、体たんぱくが燃えれば、尿素窒素などの毒素が発生することになり、たんぱく質を多く摂った時と同じになってしまいます。つまり、身体を維持できるだけの十分なエネルギーをとらなければ、たんぱく制限食は無意味になるうえに栄養失調という生命の危機に陥ってしまうのです。
エネルギー補給は穀物をたっぷり使うことが一番効果的です。ごはんを1日200gずつ3回食べると、それだけで約1000kcal摂取できます。ただし、穀物は意外に多くのたんぱく質が含まれていて、15gもあります。たんぱく制限が厳しい場合は主食だけで50%にもなってしまうので、低たんぱく食品を使う事が必須になります。
その他、次のような方法でエネルギー不足にならないようにしましょう。
- たんぱく/カロリー比の少ない食品を選びましょう。
(例:マグロは赤身よりトロ・白身魚より青身魚・赤身肉よりばら肉) - 砂糖をたっぷり使いましょう。
- 春雨やくずきりなどでんぷん製品を料理に取り入れましょう。
- 揚げ物、炒め物、サラダ(油の入ったドレッシングやマヨネーズ)など、油を使った料理を多くしましょう。
- 間食にたんぱくの少ない菓子類やジュース、シャーベットなどを利用しましょう。
卵・乳製品・餡が使われているお菓子はたんぱく質が意外に多く含まれているので注意しましょう。 - アルコール飲料も適量であればエネルギー源になります。
- 特殊食品の低(無)たんぱく・高エネルギー食品(粉あめ、マクトンなど)を利用しましょう。
食塩(ナトリウム)制限について
食塩の制限はむくみや高血圧の対策です。これがなければ通常6~7gの制限で十分であり、2~3gの極端な制限は食欲をなくし、エネルギー不足の要因になりかねませんので注意しましょう。
濃い味付けに慣れている人は塩分の少ない食事はどうしても物足りない感じがするものですが要は工夫次第です。ちょっとした気配りでおいしい減塩食を作る事ができます。
減塩の工夫は高血圧食のページを参考にして下さい。
食事療法を長続きさせるために
良質のたんぱく質を多くとるためには主食からのたんぱく摂取を減らすことで可能になりますが、主食の量を減らすとエネルギー不足が起こってしまいます。そこで、治療用特殊食品の低たんぱくご飯や麺類、パンなどを利用し、主食のたんぱく質を節約すると動物性たんぱく質を増やすことができ、エネルギーも無理せず、十分に摂取できます。
最近は通常の食品と同じ程度のエネルギーで、たんぱく質は100gあたり1g未満しか含まない物も数多くあります。種類も豊富で、私達の好みに合わせて選択することもできます。
低たんぱく食を続けるためには、まず自分に合った食生活であることが大切です。食べてはいけない食品があるわけではありませんので、できる限り自分の好みの食品を取り入れ、好みの料理と調理で食べるようにします。
食品の良し悪しではなく、医師から指示されたたんぱく質量・エネルギー量・食塩量に合うように調整する事が大切なのです。
腎臓病食1日目(朝食)
- ごはん
みそ汁(麩・ねぎ)
かんぴょうの炒め煮
くだもの(オレンジ)
味付のり・紅茶
586kcal、たんぱく質4.6g、塩分2.0g
- 低たんぱくごはん1/25 180g(1パック)
みそ汁
- みそ 10g
- だし汁 130cc
- 麩 2g
- ねぎ 25g
かんぴょうの炒め煮
- かんぴょう 5g
- にんじん 20g
- ごま油 3g
- 砂糖 3g
- しょうゆ 4g
- だし汁 30cc
その他
- オレンジ 50g(1/3個)
- 紅茶 1パック+粉飴40g
- 味付のり 2g(1袋)
- たんぱく制限食では主食に低たんぱく食品を利用するとエネルギーを減らさないで、たんぱく質だけを減らす事ができます。
低たんぱくごはんは種類も多く市販されていますので、好みの物を選んでください。 - 味付のりはしょうゆをつけずにいただきました。
腎臓病食1日目(昼食)
ごはん
チキンカツ
海草サラダ
さやえんどうの和風ソテー
586kcal、たんぱく質18.8g、塩分2.0g
- 低たんぱくごはん1/10 180g(1パック)
チキンカツ
- 鶏もも皮なし 70g
- こしょう 少々
- 小麦粉 3g
- 生パン粉 10g
- 油 9g
- キャベツ 20g
- レモン 10g
- パセリ 2g
- ソース 5cc
海草サラダ
- サラダ用海草 25g
- きゅうり 20g
- ミニトマト 1個
- ドレッシング 10g
さやえんどうの和風ソテー
- さやえんどう 20g
- エンギリ 30g
- 生しいたけ 10g
- 油 3g
- 塩 0.3g
- こしょう 少々
- しょうゆ 2g
チキンカツ
- 鶏肉は観音開きにして、こしょうで下味をつける。
- 水溶き小麦粉、パン粉の順に衣をつけて油で揚げる。
- 器に千切りキャベツとカツを盛り付け、レモン、パセリを飾る。
- 鶏肉は開く事で、少ない肉が大きく見え、油の吸収も多くなり、エネルギーもアップできます。
- 衣に卵を使わないでたんぱく質を制限します。低たんぱく食ではこのようなちょっとした工夫も大切です。
腎臓病食1日目(夕食)
- ごはん
さわらの照焼
かぼちゃの含め煮
マヨネーズ和え(もやし・にんじん)
マクトン入り胡麻豆腐
736kcal、たんぱく質12.8g、塩分2.1g
- 低たんぱくごはん1/10 180g(1パック)
さわらの照焼
- さわら 40g
- しょうゆ 2g
- みりん 3g
- 料理酒 1g
- 油 1g
- しその葉 1g(1枚)
- 甘酢生姜漬 10g
かぼちゃの含め煮
- かぼちゃ 60g
- 生しいたけ 20g(1枚)
- 砂糖 3g
- みりん 3g
- しょうゆ 3g
- だし汁 20cc
マヨネーズ和え
- もやし 50g
- にんじん 10g
- マヨネーズ 15g
- しょうゆ 3g
- からし 少々
マクトン入り胡麻豆腐
- マクトンゼロパウダー 20g
- 黒すりごま 1.5g
- 水 50cc
- 粉寒天 0.4g(1/10袋)
- 生姜 2g
- しょうゆ 3cc
マクトン入り胡麻豆腐
- 鍋に水と粉寒天を入れ、かき混ぜながら寒天を煮溶かす。
- 寒天が溶けたら2~3分煮詰めて火をとめ、マクトンパウダーと黒すりごまを入れて、よくかき混ぜながら粗熱をとる。
- 粗熱がとれたら型に流し、冷蔵庫で固める(熱いうちに流すと二層に分離してしまうので注意)
- 型からはずし、おろし生姜を添え、しょうゆをかける。
- マクトン入り胡麻豆腐はたんぱく質をほとんどとらずに約160kcal確保できます。またおかずの1品となるので、おかずが増えて満足感もでます。
マクトンパウダーに水だけ加えると奴豆腐風に、また胡麻の代わりに砂糖を加えると牛乳羹風のおやつにもなります。中身を替えて別々の器に流すと一度に色々な味のものができ楽しめます。
マクトンゼロパウダーは一般の油より消化吸収に優れ、体内で速やかにエネルギーに変わる特殊な粉末油脂です。100g当りの栄養成分はエネルギー789kcal、たんぱく質0gです。
どんな料理にも手軽に利用でき、エネルギー補給に便利です。
腎臓病食2日目(昼食)
- 山菜そば
ポテトサラダ
フルーツみつ豆
689kcal、たんぱく質6.1g、塩分2.7g
山菜そば
- げんたそば 100g
- 山菜水煮 30g
- 乾燥わかめ 0.3g
- ねぎ 10g
- 揚げ玉 8g(市販)
- めんつゆ3倍希釈 20g
- だし汁 150g
ポテトサラダ
- じゃがいも 50g
- きゅうり 10g
- にんじん 10g
- マヨネーズ 12g
- 塩 0.2g
- こしょう 少々
フルーツみつ豆
- みつ豆缶詰 1缶
- いちご 15g(1個)
- 砂糖 10g
- 粉あめ 15g
フルーツみつ豆
- 鍋にみつ豆缶詰のシロップと粉あめを入れ、よく溶かしてから火にかけ、粉あめ入りシロップを作り、冷ましておく。
- みつ豆缶詰は器に盛り、1のシロップをかけ、いちごを飾る。
- みつ豆は缶詰をそのまま食べるのもよいですが、粉あめを加えると、甘味はそのままでエネルギーアップできます。
ただし、カリウム制限がある場合は缶詰のシロップは使わないで下さい。
腎臓病食2日目(夕食)
ごはん
揚げだし豆腐
なすの香味炒め
胡麻和え(はくさい)
687kcal、たんぱく質16.4g、塩分1.3g
ごはん
- メディカルライスソフト 100g
- 水 150cc
揚げだし豆腐
- 豆腐 150g
- 片栗粉 6g
- 油 9g
- 砂糖 2g
- みりん 2g
- しょうゆ 3g
- だし汁 20cc
- にんじん 5g(1枚)
- さやえんどう 2g(1枚)
なすの香味炒め
- 豚ひき肉 20g
- なす 60g
- ねぎ 10g
- 生姜 2g
- 油 2g
- 砂糖 1g
- 料理酒 1g
- しょうゆ 4g
- たかのつめ 少々
胡麻和え
- はくさい 60g
- 黒すりごま 4g
- 砂糖 3g
- しょうゆ 2g
揚げだし豆腐
- 豆腐は水をよくきり、片栗粉をまぶして油で揚げる。
- にんじんとさやえんどうは茹でる。
- だし汁に砂糖、みりん、しょうゆを加え、火にかけ、たれを作る。
- 器に1の豆腐を盛り付け、3をかけ、にんじんとさやえんどうを飾る。
なすの香味炒め
- なすは乱切り、ねぎは小口切り、生姜は大きめのみじん切りにする。
- フライパンに油を引き、生姜とたかのつめを炒め、次になすとねぎを加えて炒める。なすがしんなりしたら調味料を加え、さっと炒めて火を止める。
- ナスは強火で手早く炒めるとおいしく出来上がります。
腎臓病食3日目(朝食)
- パン(低たんぱくパン)
コールスローサラダ
くだもの(いちご)
ジュース(りんごジュース)
527kcal、たんぱく質3.4g、塩分0.9g
パン
- 低たんぱくパン 50g(1個)
- マーガリン 8g(1パック)
- ジャム 20g(1パック)
コールスローサラダ
- キャベツ 30g
- きゅうり 10g
- にんじん 5g
- コーン 5g
- 干しぶどう 5g
- ドレッシング 15cc
その他
- いちご 50g(3個)
- りんごジュース 200cc
コールスローサラダ
- キャベツ、きゅうり、にんじんは千切りにし、水につける。干しブドウはぬるま湯につけてもどす。
- 器に野菜と干しブドウを盛り、ドレッシングをかける。
- 低たんぱくパンは甘味があるのでマーガリンとジャムは好みに応じてつけてください。ただし、マーガリンとジャムはエネルギーが高いので他のもので調節して下さい。
- カリウム制限のある場合はサラダ用の野菜は15分程度水につけると、カリウムを減らす事ができます。またジュースは果汁の少ないものを選んでください。
腎臓病食3日目(昼食)
ごはん
蒸し魚のあんかけ(たら)
アスパラのバター炒め
里芋サラダ
662kcal、たんぱく質16.4g、塩分2.2g
ごはん
- メディカルライスソフト 100g
- 水 150cc
蒸し魚のあんかけ
- たら 40g
- 塩 0.4g
- こしょう 少々
- たけのこ 20g
- たまねぎ 20g
- にんじん 10g
- グリンピース 5g
- 砂糖 3g
- しょうゆ 4g
- だし汁 30cc
- 片栗粉 2g
アスパラのバター炒め
- グリーンアスパラ 40g
- しめじ 20g
- マーガリン 5g
- 塩 0.5g
- こしょう 少々
里芋サラダ
- さといも 60g
- ベーコン 5g
- 油 1g
- きゅうり 15g
- マヨネーズ 10g
- 練りごま 5g
- 砂糖 1g
- 塩 0.2g
- 粉からし 少々
- サニーレタス 8g
蒸し魚のあんかけ
- たらは塩・こしょうをして蒸し器で蒸す。
- たけのこ、たまねぎ、にんじんは千切りして、だし汁で煮る。やわらかくなったら調味料を加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。
- 器に1を盛り付け、2のあんをかけて、ゆでたグリンピースを飾る。
里芋サラダ
- 里芋は一口大に切り、ゆでる。
- ベーコンは細かく切り、油で炒める。
- きゅうりは一口大に切る。
- マヨネーズ・練りごま・砂糖・塩・粉からしを混ぜ合わせ、123と和える。
- 器にレタスを敷き、4を盛り付ける。
- 里芋サラダのベーコンは油で炒めることで、ベーコンの風味がよくなります。
腎臓病食3日目(夕食)
ごはん(メディカルライス・でんぷん米)
メンチカツ(豚ひき肉)
甘酢和え
中華スープ
707kcal、たんぱく質14.7g、塩分1.4g
ごはん
- メディカルライスソフト 100g
- 水 150㏄
メンチカツ
- 豚ひき肉 50g
- たまねぎ 30g
- 生パン粉 5g
- こしょうとナツメグ 少々
- 油 2g
- 小麦粉 2g
- 生パン粉 10g
- 油 5g
- レタス 15g
- トマト 30g
- パセリ 1g
- ソース 5cc
甘酢和え
- はるさめ 15g
- きゅうり 10g
- にんじん 10g
- 乾燥わかめ 0.1g
- 砂糖 5g
- 酢 5g
中華スープ
- きくらげ 0.6g
- 万能ネギ 2g
- ごま油 2g
- 中華味 0.8g
- 塩 0.5g
- こしょう 少々
メンチカツ
- たまねぎはみじん切りにして油で炒め、冷ます。
- 豚ひき肉に1と生パン粉、こしょう、ナツメグを混ぜて平たく丸める。水とき小麦粉とパン粉をつけ、油で揚げる。
- 器にレタスを敷き、2とトマトを盛り付け、パセリを飾る。
- メンチカツは何食分かを作り、冷凍しておくと便利です。冷凍する場合はパン粉もつけ冷凍してください。
- はるさめは原料がでんぷんなので、たんぱく質を気にしないで分量を調節することができ、エネルギーアップができます。